『ヴェーバー学の未来――「倫理」論文の読解から歴史・社会科学の方法会得へ』刊行ご挨拶

 いくらか凌ぎよい季節となりましたが、ますますご清祥のことと拝察いたします。

 さて、このたび、前著『ヴェーバー学のすすめ』につづき、前著『学問の未来――ヴェーバー学における末人跳梁批判』の姉妹篇『ヴェーバー学の未来――「倫理」論文の読解から歴史・社会科学の方法会得へ』が、近々未来社より刊行される見通しとなりました。前著『学問の未来』の上梓から日も浅く、たいへん恐縮に存じますが、お暇の折、お目通しいただければ幸甚と存じます。

 わたくしといたしましては、これをもって、羽入辰郎著『マックス・ヴェーバーの犯罪――「倫理」論文における資料操作の詐術と「知的誠実性」の崩壊』(20029月、ミネルヴァ書房刊)にたいする一連の批判に、ひと区切りつけたいと思います。ただし、同書の原論文に学位を授与した東京大学大学院人文社会系研究科倫理学専攻に学位認定の学問的根拠を問う、公開論争の課題は、残されておりますが。

 つきましては、このさい率直にお願いしたいことがひとつあります。それは、ご同僚/ご友人との座談や、学生/院生への対応/対話その他、任意の機会に、下記のようなメッセージをお伝えいただきたいということです。すなわち、「羽入書に見られるような、『知的誠実』と『緻密な論証』を装う、学問性そのものにたいする攻撃にたいして、学問上は一専門家により、ともかくも委曲を尽くした反論がなされ、理非曲直は明らかにされている。したがって、たとえば人文・社会科学の諸領域で講義を担当しておられる各位には、従来それぞれ必要に応じてヴェーバーに論及されてきた諸箇所などで、『ひょっとすると自分も「詐欺」に加担しているのではないか』『「原典」による裏付けのない臆説を広めているのではないか』といった懐疑/逡巡に、語勢を弱められる必要は毛頭なく、従来どおり、あるいはいっそう明朗闊達に、ヴェーバー論及を進め、歴史・社会科学のなんであるかを、後輩や学生たちに伝え、知的な刺激を与えつづけていただきたい」、「羽入書と拙著とを精細に比較検証し、専門的に鑑定してくださるにこしたことはないとしても、そうした時間を割いていただくにはあまりにも多忙な方々も、任意の機会に、『羽入書は、学問上は反論ずみ。必要とあれば、折原の三部作を参照』とご指示いただき、茫漠たる懐疑/逡巡/戸惑いの伝播/拡大を防止していただきたい」ということです。どうか、ただこの一点、人文・社会科学の健やかな発展のために、ご一考いただければ幸甚と存じます。

 では、時節柄、くれぐれもご自愛のほど、お祈り申し上げます。

2005830

折原