拝啓

 陽春の候、お変わりなくお過ごしでいらっしゃいましょうか。

 さて、このたび、拙稿「ヴェーバー科学論ほか再考――福島原発事故を契機に」が『名古屋大学社会学論集』33号に収載され、刊行されましたので、抜き刷りを一部お送り申し上げます。

昨年春、原発事故一年後の論争-思想状況で、起稿を思い立ちました。

 

 周知のヴェーバー科学論から、①「科学知の限界の自覚にもとづく技術批判」という契機を採り出し、②「通常技術」と「特異技術」、③「急性の犠牲」と「慢性の犠牲」を区別し、④脱原発に向けて自然科学と人文-社会科学とが連携する結節点を探り、翻って、⑤ヴェーバー社会科学の方法につき、「殻Gehäuse」を「檻cage」と訳す曖昧な決定論的見地を斥け、⑥いちはやく反公害-脱原発を唱えた自然科学者の「予言者」(等価) 性を提言し、⑦「共鳴盤」の形成可能性を探っております。

 

被災地の深刻な現状を思うと、なんとも迂遠な論稿で、たいへん恐縮ですが、お暇の折、ご笑覧たまわれれば、幸甚と存じます。

  よい気候とはいえ、ご自愛のほど、お祈り申し上げます。

 敬具

 

201347

折原浩