日中社会学会 第21回(2009年)年次大会 特別講演 於名古屋大学

マックス・ヴェーバーの比較歴史社会学における欧米とアジアとくに中国

 

目次

折原 浩 

 

はじめに

 

 

.「倫理論文」の内容骨子

 

1.「職業義務エートス」としての「(近代)資本主義の精神」

2. カルヴィニズムの「二重予定説」と「合理的禁欲」

3.「合理的禁欲」の普及と「(近代) 資本主義精神」への転態

4.(近代) 資本主義精神」の帰結と「二重予定説」の機能変換

5.「倫理論文」そのものにおけるヴェーバーの自己限定

 

 

.「倫理論文」の限界の突破――普遍史・世界史・人類史の地平に立つ比較歴史社会学へ

 

6. 研究領域、因果帰属先の拡張と、因果帰属の論理からする他文化圏との比較

7. ヴェーバー社会学の創成――類例比較によって、人間協働生活の諸領域-諸要素にかんする類-類型概念の決疑論体系を構成し、研究対象の客観的特性把握と位置づけにそなえる、歴史研究への基礎的予備学

8.比較歴史社会学の方法定礎と概念構成――「理解科学」の「法則科学」的分肢としての「理解社会学」と、「現実科学」的分肢としての歴史学との総合

 

 

. ヴェーバーの比較歴史社会学におけるアジアとくに中国

 

9.「欠如理論」でないヴェーバーの眼差し――非西洋文化の特性把握と因果帰属の一般方針

10. インド亜大陸におけるカースト秩序の歴史的形成とその諸条件

11. 中国における近代資本主義発展に有利な経済的諸条件――X₁ 私人の手中への貨幣集積とX₂ 流動可能な人口の大量増加

12.経済的には可能な資本-賃労働関係を、社会的に阻止した主要因――氏族の勢力

13.氏族の歴史的消長を左右する諸要因――- X 政治-支配体制とX 宗教性

14. ヴェーバー支配社会学の骨子――正当的支配の三類型、下位諸類型、それぞれの組織構造

15. 中国のX 政治-支配体制――春秋戦国期の封建制から秦漢帝国以降の家産官僚制へ

16. 中国のX宗教性――家産官僚制と正統儒教との「個性的互酬-循環構造」

17. 中国農村における「ボルシェヴィズムの吸引基盤」――貧農と光棍

18. 日本における近代資本主義受け入れの諸条件――封建制と天皇制との「個性的互酬-循環構造」と、伝統主義的抵抗勢力なき「白紙状態」

19. 西欧における「近代化」への「普遍的諸要因の個性的布置連関」

 

 

. 小括――日本における「戦後近代主義」的ヴェーバー解釈からの脱却と、比較歴史社会学の「パラダイム変換」に向けて

 

20. 日本における「戦後近代主義」のヴェーバー解釈とその存在被拘束性

21.「プロテスタンティズム・テーゼ」の「法則科学」的普遍化即一面化――ベラーと余英時

22.パラダイム変換に向けて――人間存在の原点に腰を据え、そこからヴェーバーの比較歴史社会学を換骨奪胎し、再構成していく課題

23. 比較歴史社会学のパースペクティーフにおける「アメリカ合衆国」――西洋近代の「経済力と軍事力との互酬-循環構造」が、西に膨張し、「下からの近代化」を達成し、それだけに自己相対化できない「出遅れた鬼子」と、その内部的対抗契機

24. 比較歴史社会学のパースペクティーフにおける「ロシア帝国」と「旧ソ連」――東のモンゴル帝国、南のオスマン・トルコ帝国に加え、西洋近代の「経済力と軍事力との互酬-循環構造」の東端とは地続きで、対抗上「上からの近代化」を余儀なくされ、無理を重ねてきた軍事帝国

25.「傲ることなく、棄つることなく」比較歴史社会学を展開し、「学問力-文化力-平和友好力の互酬-循環」関係を創り出そう――西の島国イギリスと東の島国日本との対照性